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【逆張りの思考】広告運用における「守りの最適化」と「攻めの投資」のバランス

広告運用では、データに基づき効果の低い施策を削り、良い施策に予算を集中させる「最適化」が基本です。しかし、最適化に過度に依存すると、アカウント全体の成長が頭打ちになったり、潜在的な成果を逃すリスクも潜んでいます。本稿では、あえて「投資を伸ばす」逆張りの戦略的思考を整理し、実務観察から得られた示唆をもとに、現場で活用できる具体的な行動指針を解説します。

この記事を書いた人

植田富大

取締役

新卒でマーベリック株式会社に入社後、広告配信プラットフォーム「Cirqua」の立ち上げメンバーとして従事。流通金額は30万円→3億円規模まで拡大し、株式会社駅探へ売却。2020年7月に株式会社SGPへ参画、その後2024年に取締役に就任し、Webマーケティング事業部を管掌。またWebマーケティングスクールでは、2年間で500名超に対して、Web広告の授業を実施。

目次

    広告運用における最適化の罠:CPC低下が招く“アカウントのやせ細り”

    広告運用における自動最適化や日々の設定変更では、CPC(クリック単価)が下がると一見効率的に見えます。しかし、その低下によりアルゴリズムが質の低いユーザー層に偏って最適化されることがあり、短期指標が改善しても長期的な成果にはつながらない場合があります。短期指標の改善に安心していると、アカウント全体の成長機会を逃し、結果として“アカウントのやせ細り”を招くことがあります。

    <アカウントのやせ細りの具体例>
    1. 質の低い流入の増加
      CPCを抑えるために、アルゴリズムは最もCVしやすい優良掲載枠を避け、コンバージョン率の低いユーザー層へ配信することがあります。配信比率が高まると、アカウント全体の成果が低下するリスクがあります。
    2. インパクトの低下
      流入数は増えず、アカウント全体のCV数が伸び悩むことがあります。短期的にはコストが抑えられても、長期的な成果には悪影響を及ぼします。
    3. 最適化の過信に注意
      「CPCが下がっている=成果が良い」と単純に捉えるのではなく、流入の質や広告の到達層も評価に入れることが重要です。つまり、「ロジックで制御してコストを抑える」という考え方だけでなく、どの掲載面・どの順位で配信すれば最も成果が出るのか、常に戦略的な視点を持つことが重要です。

    広告成果の捉え方:クリエイティブ×掲載位置および掲載枠の視点

    広告の成果は、クリエイティブ単体の性能だけでなく、「どこに掲載されるか」によって大きく変動します。特に、ユーザーが緊急性の高い行動を取る商材(例:ファクタリング、鍵の修理など)では、掲載位置および掲載枠とクリエイティブの組み合わせが成果を左右する傾向が顕著です。単に目を引くだけのクリエイティブではなく、どのユーザーに届き、どのタイミングで行動を促すかを意識することが、広告成果の正しい捉え方であり、運用者が戦略的に判断するための重要な視点となります。

    <クリエイティブ単体での評価の限界>
    • 目を引く素材を作るだけでは、必ずしもCVにつながるわけではない。
    • どのユーザー層に広告が届くか、掲載位置および掲載枠との組み合わせによって成果は大きく変動する。
    • 下位掲載では、ユーザーが比較検討疲れしている場合があり、クリックやCVにはつながりにくい傾向がある。

    【掲載位置および掲載枠との相互作用が成果を左右】

    クリエイティブの効果は単体では測りきれず、広告がどの位置に掲載されるかによって大きく変化します。このセクションでは、掲載位置および掲載枠ごとの特徴と、成果への影響について整理します。

    <上位掲載枠>
    • ユーザーの目に入りやすく、緊急性の高い商材では即決率が高まる
    • CVR(コンバージョン率)が上がりやすく、アカウント全体の成果に直結

    <下位掲載枠>
    • 見られる可能性が低く、クリックやCVは発生しにくい
    • 時的にCPCは低下するが、長期的な成果には影響しやすい

    掲載位置および掲載枠 成果の特徴 留意点
    上位 高いCVR、即決率向上 CPCが高くなる場合がある
    下位 CPC低下 CV発生率低下、長期的成果悪化


    このように、掲載位置および掲載枠ごとに成果の特性とリスクは大きく異なります。だからこそ、短期的な効率指標だけではなく、長期的な成果を見据えた戦略的判断が求められます。

    【戦略的に成果を捉えるための考え方】

    広告成果を正しく評価するには、短期的な指標だけに頼らず、掲載位置および掲載枠とクリエイティブの組み合わせを踏まえて戦略的に判断する視点が重要です。ここでは、その具体的な考え方と運用上のポイントを解説します。

    1. 掲載位置および掲載枠とクリエイティブの組み合わせを意識する
      同じクリエイティブでも掲載位置および掲載枠によりユーザー層と反応が変化

    2. 緊急性の高いユーザー行動を見極める
      緊急性が高いユーザーは上位掲載で即決しやすい

    3. 短期指標だけに頼らない
      CPCやCTRの改善だけでなく、短期的な効率と長期的なCV獲得を両面で評価
      一時的にCTRが改善しても、CV数やLTVが伸びなければ成果とは言えない

    運用者は、単純に「どのクリエイティブが強いか」を見るのではなく、「どの位置に置くと誰に届き、どのタイミングで行動を促せるか」を戦略的に判断することが重要です。この視点を持つことで、単なる効率改善にとどまらず、次章で扱う“成果を拡大させる戦略”へと発展させることができます。

    ビビらず投資:短期リスクを超えてアカウントの成果を拡大

    これまで、CPC低下や短期効率の過信がアカウントの成長を抑え、潜在的な成果を逃すリスクについて解説してきました。しかし、短期的な指標の悪化を恐れていては、大きな成果は得られません。
    明確な仮説に基づき思い切って入札を強化すれば、アカウントのポテンシャルを最大限に引き出すことが可能です。ここでは、効率だけにとらわれず成果を拡大するための具体的な判断ポイントを整理します。

    【仮説に基づく戦略的投資】

    投資を強化する際は、まず「何を狙い」「なぜ成果が伸びるのか」という明確な仮説を立てることが重要です。

    • 狙いを明確にする
      まず、投資を強化する対象(クリエイティブ、掲載位置および掲載枠、ターゲット層)と、その理由を明確にします。「何を狙うのか」「なぜ成果が伸びると考えるのか」を具体的に描くことで、短期的な指標の変動に動揺せずに判断できます。
    • 小規模テストで検証
      大きく投資する前に、まず限定的に増額して効果を確認します。これにより、リスクをコントロールしながらポテンシャルを確認できます。

    【短期指標の変動を恐れない】

    CPCやCTRの一時的な悪化に惑わされず、長期的な成果やアカウント全体のポテンシャルを優先して評価します。

    ✅CPCやCTRが一時的に悪化しても、焦らず観察することが重要です。
    ✅短期効率の低下は、必ずしもアカウント全体の成果悪化を意味しません。
    ✅長期的な成果、CV獲得効率、アカウントの成長ポテンシャルを優先して評価します。

    【投資判断のポイント】

    クリエイティブや掲載位置および掲載枠の組み合わせを意識し、アカウント全体の成長を見据えた戦略的な投資判断を行いましょう。

    • 伸びしろのある広告枠に積極投資
      成果が頭打ちだと感じる部分でも、仮説がある場合は上位掲載や露出増加を検討します。
    • クリエイティブと掲載位置および掲載枠の相性を考慮
      単体では優秀なクリエイティブでも、掲載位置および掲載枠との組み合わせによっては成果が伸びない場合があります。戦略的に組み合わせて投資します。
    • 全体最適を意識
      部分的な短期効率にとらわれず、アカウント全体のCV獲得効率やポテンシャルの最大化を意識した判断を行います。

    まとめ

    明確な仮説に基づく戦略的投資は、短期的な指標の変動に左右されることなく、アカウントの潜在能力を最大化する鍵です。部分的な効率や短期成果にとらわれず、全体最適を意識した判断を行うことで、アカウントの成果を拡大し、これまでの頭打ちを突破することが可能になります。

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